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Auf einmal war es Liebe (TV) 突然の恋

ドイツ映画 (2019)

オスカー・ネッツェルが出ていなかった絶対に紹介しなかったTV映画。内容は、30代半ばのヤコブ(デパートのおもちゃ売り場の担当者)が、マリー(幼友達で大人になってからも恋人同士だったが、7年半に別れた)と会ったことで恋心が再燃する。そこに、化粧品売り場に新しく配属されたロッテが登場。彼女には11歳のベンという男の子がいる。この2人の女性が奇妙な形で絡み、最後に、ヤコブが選んだのはロッテ。このTV映画は、ドイツの公共放送のサイト「Das Erste」でで無料公開されている。いつまで有効かは分からないが、観たい方は ココ を、クリックされたい。解像度は、最高で1920×1080まで選択できる。また、「UT」のマークが出ていれば、カラーのドイツ語字幕が表示される。このTV映画の字幕は、他では入手不可能なので、このサービスはありがたい。しかし、YouTubeの動画ではないので字幕のダウンロードができない(GoogleサーバからダウンロードするCGIも使えない)。そこで、より手間のかかる方法を採用せざるを得なかった。最後に、ベン(オスカー・ネッツェル)の顔が 常に小さくしか映っていないことから、使用する写真のほとんどを16%拡大(周辺をカット)した。

上で述べたように、この映画の紹介の目的はオスカー・ネッツェルにある。さらに、安手の脚本の非現実的な構成は複雑そのもの。よって、内容のポイントを箇条書きの形で示す。オスカーの役はベン
 ・主人公は、ハンブルクのデパートのおもちゃ売り場に務める30半ばの冴えない男ヤコブ。
 ・ヤコブには、幼いことから仲がよかったマリーという女性がいたが、彼女は別の男と結婚し、ヤコブはそれが誰か知らない。
 ・デパートの化粧品売り場に、ロッテというバツイチの美人が新しく務め始める。
 ・ロッテには、8-10歳のベンという息子がいる。
これが、映画が始まる時点での状況。
 ・ロッテのアパートの部屋が水道工事中住めなくなったと知ったヤコブは、親切心からスタジオを数日使うよう勧める。
 ・別れて7年になるマリーが、ヤコブの1部屋しかない狭いアパートを訪れる。その時、たまたま管理を依頼されていた向かいの広いスタジオにいたため、マリーは、彼の職業と収入を誤解する。また、その部屋に、持ち主が結婚したことを示す表示があったため、マリーはヤコブが結婚したと誤解。マリーをあきらめ切れないヤコブは、別居中と嘘を付く。そこに、ロッテとベンが入ってきたので、マリーは2人がヤコブの妻子と誤解する。
 ・ロッテは、マリーをスタジオで夕食に招待し、「ヤコブは写真家で、ロッテとベンは妻子だが、仲が戻る可能性はない」ということを納得させようとする。しかし、ロッテとベンが遠慮して席を外した時、ロッテの愛人がスタジオに来る。しかし、その男は、ヤコブの遥か上の上司で、かつ、マリーの夫だった。マリーは、夫の浮気の証拠を見て部屋を飛び出す。ロッテは自分が利用されていたことに怒る。上司は、ヤコブが自分をハメたと思いクビにする。
 ・ヤコブは、マリーに対する恋心が冷め、いろいろあったが、最後にはロッテに求愛し、受け入れられる。
 ・この筋書きの中で、ベンは、ロッテより先にヤコブと会って彼が気に入り、親しくなり、母ロッテを動かしてヤコブを助け、あるいは、ヤコブが窮地に立った時は、ヤコブを奮い立たせるという重要な役回りを演じる。

オスカー・ネッツェル(Oskar Netzel)が、映画初出演だった『Kopfplatzen(頭が爆発しそう)』(2019)に続いて出演したTV映画。主役ではなく、重要な脇役。ヤコブとロッテの仲を取り持つキューピッドが役回りだが、まさにぴったり。コケティッシュな目の存在感は大きい。

あらすじ

映画の冒頭、25年ほど昔の映像が映る。場所は、ハンブルクの中心を流れるエルベ川(左岸)沿いの高台の上。対岸にはコンテナーヤードが見える。そこで、不細工な少年と、可愛い少女が一緒にいて、少年はナイフで木の欄干に「WIR〔僕たち〕」と彫っている(1枚目の写真)〔ずっと後で、この場所の夜景が出てくる〕。少年は、アグファの小型カメラtele pocket 4008を取り出すと、手を伸ばしてツーショットの写真を撮る。このプリントは壁に貼られ、それから4半世紀が経過。写真は黄ばんで汚れている(2枚目の写真)。そして、隣には、20歳を超えた頃のツーショットも貼ってある(3枚目の写真)。これらのことから、この男女(ヤコブとマリー)は、幼馴染で、成人になってから親しく付き合っていたことが分かる。ただ、写真はそこで途絶えているため、①2人は その後別れ、②ヤコブに新しい恋人はできなかったらしい、ことが分かる。
  
  
  

そして現在。朝、目覚ましラジオで起きたヤコブは、狭いロフトにあるベッドから木の梯子で、狭くて乱雑な1階に降りる。この部屋(1DK)には、冷蔵庫から机まで置いてあり、住宅事情が極めてお粗末だ〔ヤコブは、大人になったマリーと付き合っていた頃から、この狭いアパートに住んでいた〕。そして、場面は一気にデパートのおもちゃ売り場に。おもちゃのトラクターを取り上げると、「ほら。最後の1個とは運がいいな」と言って、カウンターに置く。「11ユーロ〔当時の1300円〕だよ」。ヤコブが初めて見る少年(ベン)はポケットから小銭を出してカウンターに置く(4ユーロしかない)。「足りないな」。ベンは、何も言わず、大きな目でじっとヤコブを見つめる。「あと7ユーロ〔800円〕」。それでも、表情一つ変えない(1枚目の写真)。根負けしたヤコブは、「OK。ちゃんとある」。その言葉で、にわかにベンの顔がほころぶ(2枚目の写真)。そして、ありがとうも言わず、おもちゃを取ると立ち去る。「また来いよ」。おもちゃ売り場の全景が映る(3枚目の写真)。
  
  
  

ヤコブがセキュリティー室に行くと、長年の付き合いのトーステンが、監視カメラに映る帽子売り場の中年女性を見てイライラしている。「帽子を百回も試してる」。ヤコブは、「忍耐の根は苦いが、甘い実をつける」と父親から聞いた言葉を口にする。トーステン:「香水売り場の新しい子〔ロッテ〕みたか? ノックアウトされる」。ヤコブが、自分の女性観について話していると。突然、1台のカメラに1人の女性が映る(1枚目の写真、矢印)〔マリー〕。それを見たヤコブは、何も言わずに部屋を飛び出して行く。しかし、階段の途中でフロアを見渡すが、どこにもその姿がない。1階に降りたヤコブが、よく見もせずに振り向いて歩き始めると、商品を抱えた女性〔ロッテ〕の背中にぶつかる。その勢いで、ロッテが持っていた箱の中の小箱が飛び出る(2枚目の写真)。ヤコブは、一言、「ごめん」と言ったきり、マリーがいないかと見回す。ぶつかられ、商品を床にまき散らされて、「ごめん」の一言はヒドすぎるので、ロッテは、「ごめんだけ? 手伝いなさいよ」と怒る。「今、すごく忙しい」。「今すぐ、手伝って」。ヤコブはテキトーに小箱を集めながら、「女性が通るの見なかった?」と訊く。そこは化粧品売り場なので、返事は「いっぱい」。「新しい子だね?」。「それって、話しかけてるの?」。「ううん」。そして、集めた小箱を「これ」と言って渡すが、テキトーに集めただけなので、すぐにバラバラに。ヤコブの第一印象はきわめて悪い。ヤコブがさらに捜していると、トーステンが部屋から出てきて 「何なんだ?」と訊く。「彼女だ」。この一言で、トーステンは理解する。そして、①ハンブルクには住んでない、②別れて7年になる、③かつてヤコブが「彼女には もう耐えられない。僕は ダメ男で、デパートでこんな仕事してて、狭いアパートに住んでる」と自嘲した、の3点を指摘し、目を覚ますよう求める。ヤコブは、③について 「そんなこと言ってない」と言うが、トーステンは手帳を開くと、「2012年4月8日。それ以後500回は言ってる」と断言。そして、自らを “犯罪学者” と自慢する。翌朝、ヤコブは電話の音で目が覚める。留守録になっているので、相手の声が聞こえる。それは、向かいの部屋に住む写真家からのメッセージだった。「お早う、お隣さん。悪い知らせだ。帰宅が遅れる。あと最大3週間、植物の面倒を見てやって欲しい。3日に一度、菜種油を植物に噴霧する。じゃあよろしく、また会おう」。ヤコブは、噴霧器を持ち、向かいの部屋のドア〔距離3-4m〕の前まで行くと、暗証番号でロックを解除し、大きな部屋の一角に10数鉢置いてある観葉植物に菜種油をかける。そして、作業が終わって部屋を出ると、何と、そこにマリーがいた〔デパートで会えなかったので、昔のアパートに来てみた〕。マリーは、ヤコブが部屋を替えたと思い込む。「戻ったのかい?」。「2週間ね。まだ、ここにいるかなって 来てみたの」。「会えて嬉しいよ」。「6年ね」。「7年半だ」。お互いに、「どうしてる?」と声を掛け合った後、抱き合う。マリーは、開いているドアの向こうに見える素敵な室内にびっくりする。部屋に入ってすぐの場所には、三脚やアンブレラ型照明など、プロの写真家の機材が置いてある。マリーは、ヤコブが デパートの冴えないおもちゃ売りをやめ、プロの写真家になったと思い込む。さらに、部屋の奥に入って行くと、リビングの広さに圧倒される(3枚目の写真)。ヤコブがこうした誤解を解く前に、マリーの携帯に着信があり、彼女は携帯の番号を紙に書くと、「電話してね」と言って出て行く。
  
  
  

そのまま出勤したヤコブは、化粧品売り場に置いてある “宣伝用の液晶モニター” に映った女性が、「私の初恋は永遠です」と話すのをじっと見る(1枚目の写真、左にいるロッテとは対照的)。ヤコブは、“初恋+結婚したのに別れた” マリーのことを対比して考える。そして、先ほどもらった紙を出し、マリーの携帯に電話する。留守録だったので、「やあ、また僕だよ。電話番号、これで分かるよね〔着信履歴〕」と言って切る。それが聞こえたロッテは、ヤコブに、「電話を寄こさなかったら、興味がないってことね」とズバリ言うと、ヤコブは 「複雑なんだ」と答えるが、マリーにもらった紙を置き忘れてしまう。ヤコブは、おもちゃ売り場に行き、もう一度マリーに電話をしようとしたところ、監視カメラで見ていたトーステンが、店内スピーカーを使って 「ヤコブ」と冗談で呼びかける。びっくりしたヤコブは、“廉価なおもちゃの詰まった木の樽” に体をぶつけ、一番上に乗っていた人形が床に落ちる(2枚目の写真、矢印)。ヤコブが首のなくなった人形を拾っていると、横で、「壊れちゃった」と声がする。ヤコブが、声の方を向くと、そこにはベンがいる。「何だって?」。「壊れちゃったね」(3枚目の写真)。
  
  
  

ヤコブは、「いいや、これでいいんだ。これはドクター・ペイン〔ドイツ語のPein(パイン:痛い)の代わりに英語のPainを使った/首がもげて痛いから?〕だから」(1枚目の写真、矢印は欠けた首)。ベン:「ドクター、何?」。「ペイン」。「聞いたことない」。「ドクター・ペインは、ひたすら待ち続ける。駆けずり回っても意味がない。拳銃もやたら撃たない。その瞬間を待ってるんだ」。「どの瞬間?」。「さあ。ただ待つんだ」。「バカみたい」。「本人も気付いてる」。「どうやって見るの?」。「何?」。「首がないのに、どうやって見るの?」。「いいかい、目がなくても、心で見ることができるんだ」。ベンは、まさかといった顔でヤコブを見る(2枚目の写真)。そして、「薬、やってるの?」と訊く。ヤコブは、真顔になると、「学校に行かなくていいのか?」と訊く。「先生が病気。そうじゃなくても、午後4時だから…」。「そっちは分かった。もう遅いだろ。両親が心配するぞ」。「ママは働いてるし、パパは… 知らない。あんたは?」。「僕か? ママは旅行してて、パパはずっと前に…」。その時、ロッテが、「私、新米だから訊かないと」と客に言うと、「ねえ、『ラ・ブロッブ』って、売ってる?!」と店内に響き渡るような大声で訊く。すると、偶然、後ろのモニターの女性が、「ラ・ブロッブは、セルジュの入浴剤です」とコマーシャルを始める。それを目の前にいて聞いたロッテは、「分かるハズないでしょ」と客に行って捜しに行く。ヤコブは、思わず 「怖い女性だな」と言ってしまう。ベン:「あれ、ママだよ」。「わあ、ごめん」。「いいよ、ママっ子じゃないから」(3枚目の写真)。
  
  
  

仕事の時間が終わり、ヤコブが社員用の出入口から出てくると、ちょうど携帯の鳴る音がするので、マリーからだと思って耳に当て、「マリー、ちょうどよかった」と話すが、返事がない。実は、一足先に出ていたロッテに電話がかかってきたのだ。ロッテは、かかってきた電話に、①アパートの部屋の水道管が壊れて補修に数日かかる、②息子に楽しいクリスマスを約束した、の2点を挙げ、助けてくれるよう頼むが断られる〔電話の相手や、断られた理由は分からない〕。終わった後、ロッテは、「ひどい。悲惨なクリスマスになりそう」と悔しがる。それを見ていたヤコブは、純粋な親切心から 「助けてあげようか」と言い(1枚目の写真)、向かいの留守部屋の住所と暗証番号を書いた紙を渡し、「今、使われていないんだ。2・3日泊ってもいいよ」と申し出る。これに対するロッテの返事はひどいもので、ニコリともせず、「セックスはなしよ」とズバリ言う。「何だって?」。「分かってるでしょ」。「君は、タイプじゃない」。ヤコブが不機嫌にアパートに戻ると、ドアの脇で1人の女性が待っている。ヤコブは 「写真を撮りたいのかい?」と訊く。「コンプカード〔モデルを希望する女性が必要なカード〕用に」。「残念だな。彼ならまだスイスだ」。そこに、マリーがやってくる。彼女はヤコブが写真家だと思っているので、ヤコブは芝居を続けざるをえなくなる。そこで、スイスと言ったのは冗談ということにし、2人を写真家の部屋に入れる。そして、慣れない手つきでカメラを三脚にセットしようとする(2枚目の写真)。しかし、どうやっても上手く取り付けることができないので、手持ちで連写し始める。相手も、モデルになったつもりで始終ポーズを変える。まさにプロのようだが、撮り終えた後で、撮った写真を液晶モニターで確認すると、すべてピンボケ。古い言い回しを使えば、“バカチョンカメラ” ではないので、ちゃんと設定しないと、オートフォーカスにはならない。ヤコブが困った顔をしているのを見た女性は、「私、ダメだった?」と心配する。ヤコブは女性を安心させると、子供時代のtele pocket 4008を取り出し〔25年前に使っていた古いカメラを、どこから持って来た? 水銀電池はなぜ有効か? なぜフィルムが入っている?〕、それで女性の写真を数枚取り、今や過去の遺物でしかない110フィルムのカートリッジを女性に渡す〔現像できる場所があるのだろうか?〕。女性にお引き取りを願った後、ヤコブは、スタジオでマリーと2人だけになる。マリーは古いカメラを見て、「それ、パパから?」と訊く。「うん」。「まだ、持ってるなんて いいことね」。そして、たまたま、スイッチの入っていたパソコンの壁紙の部分に、英語で、「わが妻と、可愛い息子へ」と書かれていたのを見て、「結婚したの?」と尋ねる〔いつ、パソコンの電源を入れたのだろう?〕。ヤコブは、長い間 別居中だと嘘をつく。そのあと、マリーは、自分の結婚が如何に失敗だったかを話し始める(3枚目の写真)〔マリーが結婚した相手は、ヤコブを見下すことしかしない嫌な上司ティル・フィヒテという設定だが、その事実をヤコブは知らない〕
  
  
  

ヤコブが、自分のことを “失敗者” と言った時、マリーは、「あなたは失敗者なんかじゃない。こんなに成功してるじゃない」と言い、2人はキスしそうになる(1枚目の写真)。その時、いきなりドアが開き、「誰かいるの?」と大きな声がする。2人は慌てて離れる。ドアから入って来たのは、ロッテと息子のベン〔この時、2人が親子だと初めて分かる〕だった(1枚目の写真)。マリーは、ヤコブの妻子が戻ってきたと思い、闖入者に向かって「ごめんなさい、失礼」と声をかけつつ、逃げるように出て行く。事情を察したロッテは、「彼女、私たちがあなたの家族だと思ったのね。だからどうなの。そうじゃないでしょ。説明すりゃいいじゃない」と言うと、さっき売り場に忘れていった “電話番号を書いた紙” をヤコブの前に置き、「電話したら」と陽気に言う。しかし、ヤコブの顔は冴えない。マリーに、“長い間 別居中” だと嘘をついたからだ。「事は、そんなに簡単じゃない。マリーは、君たちが僕の家族だと思ったけど、その結婚は終わってるんだ」。ベンは 「愛って、そんなに複雑なものなの?」と訊く(3枚目の写真)。「そうだ」。そう言うと、ヤコブは立ち上がり、「寝てくるよ」と言って部屋を出て行く。
  
  
  

2人きりになると、ベンは、「助けてあげなくちゃ。いい人だ」と母に言う(1枚目の写真)。「みんな、最初は『いい人』なのよ」。この冷めた返事を、ベンは、「ママ」とたしなめる。「できれば助けるわ。でも、どうしたら?」。ここで、ベンは、ヤコブが持っていかなかった “電話番号を書いた紙” を取り上げると、母に渡す(2枚目の写真、矢印)。「そうね、分かったわ」。翌日ヤコブがデパートに行くと、ロッテが声をかけてくる。「何もかも上手くいくわよ。マリーを夕食に招いたの」。ヤコブは、耳を疑い、一緒にいたトーステンに、「彼女、マリーって言ったか?」と訊く。トーステンにとっては、ロッテがヤコブに声をかけたこと自体に耳を疑う。そこで、ヤコブは、「ロッテとは、今、一緒に住んでる」と誤解を生む返事をし、ますますトーステンを驚かせる。しかし、ヤコブは、ロッテの言ったことが気になるので、トーステンは放っておいて、「ロッテ、何て言った?」と訊きにいく(3枚目の写真)。しかし、ロッテは 「息子を屋台に置いてきた」と言い、デパートから飛び出して行く。
  
  
  

次のシーンは、デパートの近くの歩道。ベンは屋台で買ってもらった物を食べ、隣に母が座り、さらに、その前にはヤコブが立っている。ロッテは 「計画は こうよ。マリーを夕食に招待し、彼女はOKした」と嬉しそうに言う。「それで?」。「それでって?」。「計画は?」。「これが計画でしょ」。「こんなの計画じゃない」。「なら自分でやれば?」。ここで、ベンが 「ママ」と諫める。そして、「食べてる時、僕らがマリーに話すんだ。あなたとは別居してるけど、仲のいい友達なんだって」(1枚目の写真)。それを受けて、ロッテも 「如何にも別居中って振る舞うから、マリーも、あんたがすぐ自由になれるって信じるわ」と言う。「それで、うまくいくかな?」。ベンは、嬉しそうに頷くが、ロッテは 「確かなものなんてない」と言い、ベンに、「ママ」と再度諫められる。「はいはい。うまくいくわ」。その後、映画の冒頭に子供時代のヤコブとマリーが一緒に写真を撮ったエルベ川沿いの高台で、2人が再会する場面がある。その様子から、ヤコブがここで待ち合わせるよう、電話をかけた結果らしい。待っていたマリーは、ヤコブの姿を見ると、いきなり、「あなたの息子、幾つ? 8、9、10?」と強い調子で訊く。ヤコブには意味が分からない。マリーは、物わかりの悪いヤコブに、「私たちが別れたの7年前でしょ」と言う。やっと意味をつかんだヤコブは、「ベンは、生物学的な息子じゃない」と苦しい言い訳をする。マリーは、誤解を謝る。これで、ベンは、偽の息子から、偽の義息になった。その後、マリーの夫から電話が入ったので去ろうとすると、ヤコブは、①25年間マリーを愛している、②マリーの結婚を危うくするつもりはない、と心の内を話す。一方、トーステンは、ヤコブの隣人のスタジオが正面に見える屋根裏部屋に望遠カメラをセットする(2枚目の写真)〔ヤコブを助けるためと本人は言っていたが、それがカメラとどう関係するのか、それに、そもそもなぜ彼の屋根裏部屋が、このような都合のいい場所にあるのかの説明は一切ない〕。カメラが窓越しに捉えたのは、ロッテが服を脱ぎ始めるところ。「やるぞ。友だち〔ヤコブ〕のためだ」。その頃、ヤコブがアパートに帰ってくると、階段にベンが座っている。ベンには、いつものような元気がない。「ママはいないのかい?」。「いるけど、ベルを鳴らしちゃいけないんだ。そうそう、試合中にママにお客があったよ。あなたの恋人だ」(3枚目の写真)。「恋人? そうだ、もちろん。他は順調だった?」。ベンは肩をすくめる。「どうした、話せよ」。「パパのこと知らないって言ったら、学校で笑われた」。「嫌な奴らだな。来いよ、いいもの見せてやる」。ベンは、初めてヤコブの部屋に入る。
  
  
  

ヤコブの狭い部屋の窓辺には、手作りのおもちゃがいっぱい置いてある。「みんな、父さんと一緒に作った物だ」。そして、紙の象を手に取る(1枚目の写真、矢印)。「どれもこれも、捨てられていた厚紙やブリキ、針金で作ってある。父さんは、環境にやさしいおもちゃの大型版を作りたがってた」。そう話すと、部屋を横切り、豚のおもちゃを手に取ると、「これは、自分で組み立てた第一号なんだ。父さんの考えを生かしてね」と説明する。「クールだね」。「幸運をもたらすぞ。君にやる」。ベンは 「ありがとう」と言って受け取ると、じっくり見る(2枚目の写真、矢印)。ヤコブが、「当時、僕らのアイディアは 笑われただけだった」と言うと、ベンは 「今じゃ、ヒット商品で、悔しがってるとか?」と、流し目でヤコブを見る(3枚目の写真)。「大違い。だって、そこいらのおもちゃは、どれもこれも…」。プラスチックと言おうとした時、固定電話が鳴り出す。留守録が作動し、ヤコブの母の声が聞こえてくる。「ママよ。明日、ハンブルクに着きますからね」。ヤコブは急いで音声をオフにすると、「何か作ろう」とベンを誘う。2人は、すごく相性がいい。まるで、本当の親子のようだ。
  
  
  

2人が仲良く並んで作っていると(1枚目の写真)、ドアがノックされ、ロッテが入ってくる。ベンが階段にいなかったので、中にいると考えたからだ。母の顔を見たベンは、「彼、帰った?」と訊く。これは重要な一言。先ほど、「いるけど、ベルを鳴らしちゃいけないんだ」と言ったが、ベンは、母が別の男と一緒にスタジオにいることを知っている〔この男こそティル・フィヒテだと、後で分かる。あまりにもひどい偶然一致。だって、マリーの夫がロッテと浮気をするなんて…〕。母は、ベンの問いに対し、「帰ったわ。ベルを鳴らせばよかったのに」と言う〔当然、相手が帰った後で、という意味だろう〕。ヤコブは 「やってみる?」と誘う。ロッテは、快諾する。2人はおもちゃ作りに熱中する。「さっきの、帰った男友達について話せよ」。「知り合って間がないの。いつも忙しくて、ひょっとして他にも女性がいるんじゃないかって。でも、信じないとね」。そして、「なぜ、いつまでもマリーにこだわってるの?」と訊く(2枚目の写真)。「愛してるから」。話はさらに進み、ベンはソファで眠ってしまう(3枚目の写真)〔まだ、夜ではない〕
  
  
  

そのあと、ヤコブはロッテを空港に連れて行く。そこで、「僕は子供時代、いつもここで過ごした。父さんが死んでから、母さんはいつも旅行ばかりしてたからね。インド、イタリア、アメリカ…」と話す〔ということは、子供時代がいつかは分からないが、仮に15歳としても、部屋にあったおもちゃは、それ以前に作られたことになる。新品同様に見えた紙の象が20年も前のものだとは信じられない〕。そのあと、2人は、ミニ・ゴルフ場に行き、そこで、「父さんは、小さなレストランのシェフ」「シュニッツェル〔子牛のカツレツ〕とザワークラウト〔酢キャベツ〕のサンドはクリスマスの伝説」と話す〔映画の最後に出てくる〕。スタジオに戻った2人は、ベンと3人で記念写真を何枚か撮る(1枚目の写真)。ベンは、夜遅くなったので寝てしまう。2人は、たくさん置いてあるプロセッコ〔イタリア・ヴェネト州で作られる白のスパークリングワイン〕を1本ずつ手にすると、セラピストになったつもりで会話ごっこをし、次は、ヤコブと義弟になって話す。その次のシーンでは、プロセッコの空き瓶が6本並び、2人はソファに横になり、さらに話を続ける。ここでの内容は、泥酔している割に、次につながる重要なもの。ロッテは、ヤコブのおもちゃについて、「乞うご期待。最初は、私たちのデパートの棚から、そして全世界の棚へ」と花火を上げる。「当然よ。10のうち9のおもちゃは、化学薬品と可塑剤でできてる。今こそ、始める時よ」と言い、「すぐよ。明日、始めましょ。アポを取って、あなたのおもちゃを、うちの店の管理職に見せるの」と言い出す。重要な話なのに、ヤコブはどんどん眠くなる(2枚目の写真)。そして、朝、ベッドで目を覚ましたヤコブは、横にロッテが寝ているのを見て 仰天する(3枚目の写真)〔ロッテが、引きずってきて寝かせた〕。すぐに目を覚ましたロッテは、「忘れないで、昼休みよ」と注意する〔管理職との面会の時間のことだが、いつ決めたのだろう?〕
  
  
  

デパートに出勤したヤコブ。ロッテに言われた通り、おもちゃを箱に一杯持って管理職に会いに行く〔この男が、ティル・フィヒテ〕。紙の象を見せ、100%古紙で作ったリサイクルの製品で、壊れれば、またリサイクルしておもちゃにできると利点を強調する。しかし、象を渡された管理職は、ヤコブが追加の説明をしているのに、象の頭を指で押し、最後には潰してしまう(1枚目の写真、矢印)。「これで、新しい象ができるのかね?」。「理論上は… 10のうち9のおもちゃは…」。管理職は、急に、ふざけた声を発して、ヤコブのアイディアを “てんでバカにしたように” 侮辱し、「これまで見た中で最大のスカだ」と断じる。落胆したヤコブが、アパートから持ってきたおもちゃ入りの箱を抱えて階段を下りてくると、フロアで電話をかけているマリーに気付く。ヤコブは、デパートの店員ではないことになっているので、ここで見つかるとヤバいと思い、姿を見られないよう、さらに階段を下りる。そこで出会ったのが、トーステン。彼は、ヤコブが、「ロッテと寝てしまった」と打ち明けると、「ヤコブと蛇女〔Schlangenlady〕か!」と感嘆する。なぜ、そんな言葉を使ったか訊かれたトーステンは、屋根裏部屋にカメラをセットして見ていたら、ロッテが激しいセックスをしているのを見てしまったと話す〔相手は、この時点では告げないが、例のティル・フィヒテ〕。さらに、“うっかり” カメラに触ったら、3秒で50枚の写真を勝手に撮ってしまった、とデジカメに責任を押し付ける。これは、ヤコブにとって新たなショックだった。さらに悪いことに、マリーがこちらに近づいてくるのが見えたので、手近にあった “青と赤のプラスチックボールが一杯入った箱” に飛び込んで隠れる。マリーは、1人でいるトーステンを見て、久し振りなので、「トディなの?」と声をかける。そして、挨拶を交わした後、「ヤコブと話してた?」と訊く。理由は、声が聞こえたように思ったから。2人は、ヤコブが隠れた箱の縁に腰をかけて話し始める。そして、話の途中で、空色のボールをつまみ取るが、それは、たまたまヤコブの顔の真上のボールだった。それに気付いたトーステンは、手を伸ばして別のボールをつかむと(2枚目の写真)、ヤコブの顔を隠す。マリーが去ると、ヤコブは、約束通り、午後3時に空港に母を迎えに行く。空港内のカフェに入り、スマーフ・アイスを2人で食べ始めると、ヤコブの携帯が鳴り出す。マリーからだったので、「今、誰が向かいに座ってるか分かるかい?」と母のことを話す。すると、マリーが何か言い、それに対し、ヤコブは、「ううん、息子じゃない」と言ってしまう。それを聞いた母が思わずむせ始め、止まらなくなる。そこで、電話を切る。その後、ヤコブは事情を説明したらしい。なぜなら、次に母が言ったことは、「マリーは思ってるのね… あなたが成功した写真家で、奥さんと子供がいるって」(3枚目の写真)。「マリーを愛してる」。「だからと言って、他人になりすますの?」。ヤコブは、いずれマリーにも真実は分かると話すが、マリーは人妻であることを知っている母は、こんな状況を続けることに強く反対する。
  
  
  

ヤコブとロッテは、ベンのサッカーの試合を見に来ている。最初に映るのは、ベンがゴール直前でキックするが(1枚目の写真、写真はボール)、キーパーにブロックされるシーン。そして、少しがっかりした2人に変わる。そこでの話題の最初は、「どうだった?」。「何が」。「おもちゃよ。うまくいった?」。ヤコブは恥ずかしいのでモゴモゴ。その後が、既に紹介した、昨夜、ロッテがヤコブをベッドまで運んだという説明。それを聞いたヤコブが、思わずホット溜息をつくと、すかさず、ロッテが 「まさか2人で寝たと思ったの?」と呆れ(2枚目の写真)、それからしばらく大声で笑い続ける。ヤコブも立場上お義理で笑うが、あまりに長く笑われるので、面白くない。そこで、話題を変えるため 「クリスマスのガチョウは売り切れだった」と話す。「まあ、どうしましょう」。「中華料理のアヒルなら手に入る」。その後、かなり離れて位置からのベンのシュートが見事にゴールし、2人とも飛び上がって喜ぶ。誰が見ても、ヤコブは、ロッテとベンの家族だ。ベンは、キャプテンから祝福される(3枚目の写真)。
  
  
  

スタジオに戻った3人は、ディナーの準備に忙しい。見える場所に、昨日撮影した3人の写真を飾る(1枚目の写真、矢印)。ロッテが 「アヒルはどこ?」と訊き、ヤコブが「電子レンジ」と答えた時、玄関のブザーが鳴る。主賓到着とあって、3人は身なりを整えて張り切り(2枚目の写真)、ヤコブがドアをさっと開けると、そこに立っていたのはトーステン(3枚目の写真)。彼は、ただ、ヤコブを励ましに来ただけだったので、さっさと追い払われる。トーステンは、言い足りないことがあったので、ドアをノックし、今度は即座に追い払われる。だから、その直後、三度目にブザーが鳴った時、ヤコブは、「うっとうしいから、来るな」と怒鳴るが、外にいたのはマリーだったので、バツの悪い思いをする。
  
  
  

かくして、ヤコブとマリーが並んで座り、向かいにベンとロッテが座って、クリスマス・ディナーが始まる。ヤコブは、開会にあたり、「ロッテと僕は、第3アドベント〔クリスマスのための待降節(4週間)の3番目の週の日曜日〕には、中華料理にしてきたんだ」と紹介すると、ベンが 「クッキーは?」と訊く、「何て?」。「フォーチュン・クッキーを作るんじゃないの?」(1枚目の写真)〔以前紹介した ジョディー・フォスターの『フォーチュン・クッキー』で、中華料理店で出されたのが、“願いの叶う” フォーチュン・クッキー/中国起源でなく日本が起源(総本家 宝玉堂の「手焼 いなり煎餅」)〕。この質問には誰も答えられない。マリーは、「お2人は、どこで知り合ったの?」と訊く。予想しなかった問いに、ヤコブは 「ベニスで」、ロッテは 「船で」と同時に答える。ヤコブは、「ベニスのゴンドラで」と言い繕う。マリーは、「素敵ね」と羨むが、ベンは 「イタリアで知り合ったの?」と、思わず不審そうに尋ねてしまい(2枚目の写真)、ヤコブに「ベン」と注意され、自分のミスに気付き、笑顔で 「もちろん。イタリアだったよね」と、言い直す(3枚目の写真)。この食事のシーンは、食べているアヒルが、半分未解凍でジャリジャリ音がすることもあって、何となく低調に終わる。
  
  
  

食事が終わると、ヤコブはベンを背負って片付けに奮闘する(1枚目の写真)〔どう見ても、すごく気の合う親子〕。それを見たマリーは、「なぜ別れたの?」と不思議そうに訊く。ロッテは 「分からない… どうしてかしら?」と誤魔化す。そのあと、2人の会話は続くが、目的は、“ヤコブとマリー” をくっつけることにあるので、ロッテは 「彼があなたを愛してて嬉しいわ」と締める(2枚目の写真)。そして、そろそろ退散して2人きりにすべきだと思い、「しまった、デザートを買い忘れたわ」と言うと、ベンと2人で部屋を出て アイスクリームを買いに行く(3枚目の写真)。
  
  
  

2人だけになったヤコブとマリー。マリーは、「彼女、まだ あなたを愛してるんじゃないの?」と疑う(1枚目の写真)。「何を? 誰が?」。「ロッテよ。絶対、愛してるわ」。「結婚は終わったんだ」。「感じるの」。「彼女は、僕を騙したんだ。ロッテが僕を愛したことはない。ずっと騙し続けた。証拠がある。ちょっと待ってて」。ヤコブは、居間の隣の小部屋に行くと、至急、トーステンに電話をかけ、ロッテが愛人と性交渉をもっていた時の写真の提供を求める。写真は、メールで送られてきたが、その写真を見たヤコブの言葉は、「オー・マイ・ゴット」。マリーに呼ばれて部屋から出てきたヤコブは 「相手を知ってる」と言う。「誰?」。「フィヒテ」〔マリーの夫なので大ショック〕 。「何て?!」。その時、ドアのベルが鳴る。てっきり、ロッテが帰って来たんだと思ったヤコブは、「暗証番号知ってるだろ」と大声で呼びかける。そして、ドアを開けると、そこに立っていたのは、彼のおもちゃを愚弄した憎きティル・フィヒテ、そして、ロッテと激しいセックスをしていた男ティル・フィヒテだった。フィヒテも、そこにヤコブがいることに驚く。フィヒテは、「私の女性に会いたいだけだ〔Ich wollte eigentlich zu Frau〕」と言う。ドイツ語の「Frau」には、「woman」の意味と「wife」の意味がある。前者ならロッテ、後者ならマリーになる。ただし、フィヒテはマリーがここにいることは知らない。だから、ロッテに会いに来たことになる。すると、アイスクリームを持ったロッテとベンが階段を上がってくる。「どうなってるの?」。その声に振り向いたフィヒテは、「君に会いに来たんだ」と言う(2枚目の写真)。すると、今度はスタジオからマリーが姿を見せ、フィヒテを見て「ティルなの?」と驚き、フィヒテも「マリーか?」と愕然とする。夫婦である2人は見合う(3枚目の写真)。
  
  
  

ヤコブは、この時初めて、マリーの夫がフィヒテだったと気付く。「だから、君は、いつもデパートに来てたのか?」。マリーは、そんな言葉は耳に入らない。フィヒテに向かい、「ここで、何してるの?!」と強い調子で訊く。「君の考えてることとは違う」。マリーは、「このロクデナシ!」と叫び、怒りに任せてフィヒテを何度も叩く。それをカメラで見ていたトーステンは、助けようと飛び出して行く。マリーは、ヤコブとフィヒテが止めるのを無視し、部屋から出て行く(1枚目の写真)。それで収まらないのが、この2人だ。陰険なフィヒテは、「待てよ。お前が仕組んだんだ。そうだろ? お前の下らんおもちゃを却下したからだ」を、いちゃもんをつける〔勝手に人の部屋に入ってきておきながら、目茶目茶な論理〕。フィヒテの言いがかりに呆れたロッテが、「ティル」と諫める。それでも、フィヒテの暴力的な行為はやまない。そこに登場したのがトーステン。後ろからフィヒテに飛びかかる。フィヒテは 「お前ら2人ともクビだ!」とわめく。こうなったら、容赦することはないので、トーステンはスタンガンでフィヒテを気絶させる。ロッテとベンは、その光景びっくりして見ている(3枚目の写真)。
  
  
  

一件落着した後、マリーがいなくなったことに気付いたヤコブは、マリーを追って飛び出して行く。トーステンは、2人が2つずつ持っていたアイスクリームを見て、「2つは要らなくなったな」と言うと(1枚目の写真)、ロッテの2つを受け取り、「ありがとう」と言って部屋を出て行く。2人だけになったロッテはベンを抱きしめる(2枚目の写真)。ヤコブは、マリーを捜して夜の街を歩き回り、部屋に戻ったトーステンは愛人とアイスクリームを楽しむ。そして、スタジオでは、ベンがアイスクリームを食べていると、フィヒテが電気ショックから意識を取り戻す。ロッテは、「ティル、二度とここに来ないで」と絶縁を言い渡す(3枚目の写真)。
  
  
  

ヤコブがマリーを見つけたのは、思い出の高台。ヤコブは 「やあ」と声をかけて近づいて行くと、「フィヒテが君の旦那とは、正直知らなかったな」と言う。「そうよ。変よね。でも、終わったわ」。そして、2人は熱烈なキス(1枚目の写真、背景の夜景は、冒頭の写真にあったコンテナーヤード)。ヤコブは一旦 顔を離し、今度は確かめるようにもう一度キスをする。そして、「どこか変だ」。「何が?」。「どんなに これを待ち望んでいたか」。「私もよ」〔少し白々しい〕。「だけど、それがもうなくなった」。「やってみれば」。「確信が持てないんだ」。「マジで?」。「うん」。2人は、落胆して夜景を見る。翌朝、ベッドから狭い部屋に降りてきたヤコブは、失望と怒りに任せて 大事なおもちゃを投げ捨て、あるいは、バラバラにする。その音に気付いたロッテは、「ヤコブ、やめなさい!」と大声で注意する。「全部、古めかしいガラクラだ」。「ガラクタじゃないわ」。それに対し、ヤコブは、「そうだ。君には お偉い展望とやらがある。計画を練るのも得意だ。おまけに、ちょっとしたビジネスもやってるしな。上司と寝て」と辱める(2枚目の写真)。これは、①ロッテがおもちゃを立派だと褒めフィヒテに見せるよう計らい、②マリーに対する誤解を解く計画を立てた、という真摯な行為に対する批判に加え、性的侮辱も含まれている。ヤコブの一方的なマリーへの思慕が無意味だと分かった腹いせを ロッテにぶつけるのは極めて卑劣な行為で、当然、ロッテも頭にきて、そのまま部屋を出て行ってしまう。ヤコブは、しばらく考え、反省し、スタジオに入って行くが、そこにはもうロッテはいない。しばらくすると、そこに母が入ってくる〔ヤコブの部屋を訪ねたのだが、スタジオのドアが開けっ放しになっていて、ヤコブの姿が見えた〕。母は、夫が死んでからの自分の人生を、「前向きに生きようとしない限り、自分を失う」と思ってやってきたと話す。そして、飾ってあった3人の写真に気付く。「これが、あなたの家族? きれいな奥さんね」。「そうなんだ。大した女性だよ」。そこで、ヤコブの顔が変わる。「時々思ってたんだ… これって、ひょっとして…」。その言葉にピンときた母は、「そうよ」と言い、ヤコブが立ち上がると、「さあ、走って!」と、ロッテに求愛するよう強く促す(3枚目の写真、矢印は3人の写真)。
  
  
  

ヤコブは、ベンがサッカーをしているグラウンドに走って行く。そして、ロッテを見つけると、「ロッテ、ひどい間違いをしてしまった。僕は何て… ごめん、心から… ホントに大バカだった。悪かった…」と息切れしながら謝り、最後に、「愛してる」と言う。しかし、ロッテは冷たく 「それで?」と返す。「何を期待してるの? 私が感動して、一緒に歌い出すとでも?」。「何も。許して欲しいだけ」。「あなた、私を傷付けたのよ、すごくね。そうやって走ってくれば、それでOKだと思ってるようだけど、そんなに甘くない。人生は短距離競走じゃない。私には子供がいる。信頼性と持久力が問われるのよ」(1枚目の写真)。寂しく去って行くヤコブを見たベンも、寂しそうだ(2枚目の写真)。ヤコブは、そのあと、いつも訪れるミニ・ゴルフ場に行き、無心に打ちながら時間を過ごす(3枚目の写真)。
  
  
  

一念発起したヤコブは、アパートに戻ると、部屋を片付け、壊れたおもちゃを直し始める(1枚目の写真、矢印はキリン)。次のシーンでは、ミニ・ゴルフ場のオーナーの老婦人と、契約を交わす(2枚目の写真)。そして、一緒に解雇されたトーステンと2人で、ミニ・ゴルフ場の落ち葉を片付ける。そして、1つ前の節のミニ・ゴルフ場の写真の真ん中に映っていた水盤の上に、大きな “羽根の生えた乳牛のおもちゃ” を置く。そして、ヤコブがずっと打っていた場所には、作り直した大型の象を置く(3枚目の写真)。大型のキリンのおもちゃに黄色のペンキを塗っている時、トーステンはヤコブのワークエプロン〔エプロン付き作業着〕の胸の部分に「S」の字を描く〔スーパーマンに見立てた冗談〕
  
  
  

翌日、すっかりきれいに整頓されたヤコブの部屋にノックの音がして ベンが入って来る。ベンは、以前プレゼントされた豚のおもちゃを見せて、「壊れちゃった。直せる?」と訊く(1枚目の写真)。「たぶん」。ヤコブが机に座って豚を見ていると、山積みになったタッパーを見たベンが 「これ、アフリカに送るの?」と訊く。ヤコブは 「ううん違う。ミニ・ゴルフの持ち主が引退するんで、今、リフレッシュしてる。アドベンチャー・ゴルフに、お土産付き〔タッパーの中身/詳細不明だが、恐らく紙で作ったの動物〕だ。悪くないだろ」と説明する(2枚目の写真)。さらに、壁に掛けてあるワークエプロンを指して、「スーパーヒーローのコスチュームもある。何でもできちゃうぞ」と言う。ベンは、「あなたは、スーパーヒーローじゃない」と言う。「どうして?」。「スーパーヒーローなら、1回失敗しても、あきらめない」(3枚目の写真)。これは、母に断られてあきらめてしまったヤコブに対する叱咤だった。それを悟ったヤコブは、「考えがある。手伝ってくれ」と覚悟を決める。
  
  
  

ヤコブとトーステンはサンタの格好をしてデパートに入り込む。そして、おもちゃ売り場で待っていたベンに、「3分後にキックオフだ」と言って、DVDのディスクを渡す(1枚目の写真、矢印)。時間になると、ベンは、母の売り場ある “宣伝用の液晶モニター” の下のDVDプレーヤーに 渡されたディスクを入れる(2枚目の写真)。すると、モニターにヤコブの顔が映る。ベンは、どうなるか楽しみにしながら至近距離からモニターを眺める(3枚目の写真)。
  
  
  

モニターに映ったヤコブが話し始めた内容には、はっきり言って 失望させられる。「初恋。母は、初恋について語った。彼の名はホルガー。ダメ男で、数ヶ月後 2人は別れた。そして、その1年後、僕の父と出会った。最初の本当の恋…」。途中で、ようやく求愛らしくなる。「初恋、二番目の恋、それらはただの数字。大切なのは、何が本物で本当かということ。君と過ごした時は、素晴らしかった。そして、すべてが本物で本当だった。なのに、僕は盲目だった」(1枚目の写真)。ここで、モニターの再生は終わり、サンタ姿のヤコブが現れる(2枚目の写真)。そして、ここからが、いわば本番。「僕がようやく気付いたこと。それは、ロッテ、君が僕のワンダーウーマンだということ。君のスーパーパワーに、どうか胸を張って欲しい。君は空を飛び回り、息子のために戦う。衝突しても、がっかりは不要。未来をみて、進めばいい。ワンダーウーマン。それは、君」。ここまで来た時、邪魔が入る。騒ぎを聞き付けたフィヒテが警備員を連れてやって来て、ただちに退去するよう命じたのだ。ヤコブは、複数の警備員によって店外に出される。ベンを連れたロッテは、フィヒテに向かって、「辞めてやる、このゲス野郎」と、憎しみのすべてをぶつける(3枚目に写真、矢印は3人が舌を出している写真)。ずっと見ていた客からは、一斉に拍手が起きる〔下司男フィヒテに対する制裁が軽すぎる〕
  
  
  

ヤコブが、ミニ・ゴルフ場の入口に 新しい看板を付けていると、「もう切符は売ってるの?」と声がかかる(1枚目の写真)。ヤコブが振り向くと、そこには心待ちにしていた2人がいた(2枚目の写真)。ベンは 「わあ、すごいね」と言って、中に走っていく。切符売り場の前で、ヤコブは、「切符はあるけど、オープンは明日だよ」と答え、さらに 「大人1枚、子供1枚だね」と訊く。ロッテは、「シーズンチケットはあるの?」と訊く。これは、先だっての求愛に対するOKの返事だと分かったので、ヤコブは身を乗り出してロッテにキスする(3枚目の写真)。後ろでは、ベンが嬉しそうに見ている。
  
  
  

そして、クリスマス・イヴ。ミニ・ゴルフ場で開かれたディナー・パーティで。ヤコブの母が、“シュニッツェルとザワークラウトのサンド” を運んでいく(1枚目の写真)。ヤコブは古い小型カメラで撮影して回る。カメラが動くとベンの笑顔が一瞬映る(2枚目の写真)。中には、何故か、マリーと “ヤコブの隣人のカメラマン” の姿も。映画は、ヤコブが手を伸ばして、全員と自分を入れて写真を撮る場面で終わる(3枚目の写真)。
  
  
  

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